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ディレクターがADに切り捨てられる!極限状態のヤバイ番組【実体験】

テレビ業界のこわ〜い話

今から5年くらい前。
僕が実際に経験した史上最悪の特番の恐怖体験をお話しします。

それは、某局のゴールデン2時間特番でした。

レギュラー化を目指した1発目の放送とあって、スタッフたちの気合いも入っていました。

集まったスタッフは

・演出 1人
・プロデューサー 1人

・ディレクター 6人
・AD 2人(のち1人増える)

予算が少なかったのか、小規模なスタッフで動かざるを得ない番組。僕は6人のディレクターのうちの1人でした。

 

恐怖① 2時間番組なのにサブだしが4時間超え

サブだしとは『スタジオ収録時にタレントたちが見るVTR』のこと。

「ワイプ芸」なんてよく言われますが、タレントさんたちはサブだしのVTRを見ながら楽しくリアクションしてくれてますよね。

この特番では計7本のサブだしVTRを作ることになりました。6人のディレクターが各1本ずつ担当することになったのですが、それでも1人ディレクターが足りません。

ディレクター
演出

とりあえず、後で考えましょう!

ということになり、
まずは6本のVTR作りに専念することになりました。

(その1本はのちのち、6人のうちの1人のDが作ることになる)

サブだしVTRは、当然、放送時間より短くなければなりません。
でないと、オンエアにのりませんから。

しかし、なぜか会議を経るたびにどれも大規模な企画になっていき、台本の段階でそれぞれのVTRの尺が40分を超えてしまいました。

40分×6本=240分(4時間)

なぜか放送尺の2倍。
4時間以上のサブだしVTRを作ることになったのです。

『笑ってはいけないシリーズ』じゃないんだから…。

 

恐怖② ADがキャパオーバー。即、崩壊

なぜか40分もの超大作VTRを作ることになった6人のディレクター達。

当然、リサーチや仕込みの量がハンパではありません。

ディレクター6人に対してADが2人しかいなかったので、必然的にADにのしかかる負担は大きくなります。

6人のディレクターから毎日のように

ディレクター
ディレクター

あれ調べて、これ調べて。

あそこ仕込んで、そこを仕込んで。

と、怒涛のような指示が飛んできます。

すぐにADのキャパはオーバーし、リサーチや仕込みはほとんど進まなくなります。1週間ほどでADの顔色が悪くなり、やがて全く機能しないようになります。

ロケまで1ヶ月あったはずの時間も、全くリサーチが進まないまま3週間、2週間、1週間と、どんどんロケ日が迫ってきます。

ちなみに、僕のロケだけでも15カ所くらいのロケ先があったので
15カ所×6人=90カ所の仕込み
(リサーチはその倍以上)
という過酷な仕事量が2人のADにのしかかっていました。

しかし、2人のADは

AD
AD

辛いけど2人で頑張ります…

お気遣いありがとうございます。

という、絶対無理なのに黙々と崩壊するまで頑張るようなタイプだったので、それはそれで恐怖でした。

あまりにも悲惨な状況に、ディレクター陣から

ディレクター
ディレクター

ADの数を増やしてくれ!

という要望が吹き出し、プロデューサーに伝わります。

しかし、新たなADが入ることはなく、ただただ時間だけが過ぎていきました。そのままではさすがにヤバいので、ディレクターがほとんどのリサーチと仕込みを自らやることに。

最終的に新たなADが入ったのはロケの前日。しかも1人だけ。
しかし、そのADがさらなる恐怖を引き起こすことになろうとは…。

この時は知る由もありません…。

 

恐怖③ ロケ2日前。なぜか尺が増える

人が足りない。時間も足りない。
そして、明らかな尺オーバー!

もちろん、各ディレクターはそのことに気づいていたので、

ディレクター
ディレクター

さすがにこれは無理でしょ!

どこを切るか相談しよう。

と、思っていました。

そもそも「どこを切るか?」ではなくどのVTRを無くすのか?』という判断が必要な状況です。

ロケ2日前。

演出や作家を集めた台本打ちがあったので

ディレクター

あの部分と、この部分と、その部分を切って

20分くらいのVTRにしよう!

と、相談するつもりでした。

 

しかし、そこで想像もつかない恐ろしい出来事が起こったのです。

 

ディレクター
演出

あれも調べて、これも調べて。

あと4つくらいロケ先を増やそうか!

演出は何を思ったのか??

台本を切るどころがどんどんどんどんVTRの内容を追加し始めたのです。僕のVTRの想定尺は60分くらいになぜか増えてしまいました。(アホなんだと思う)

キャーーーーー!!

(心の叫び)

これ、ロケ2日前ですよ。

なぜそうなったのか…、いまだに意味が分かりません。

 

恐怖④ ディレクター(僕)がADに切り捨てられる…

ロケ2日前に「40分のVTRを60分にしてくれ」と言われた僕。

さすがに対応できない…。

と思いましたが、当時若かった僕は愚直に言われたことを遂行するしかありませんでした。

僕一人では厳しいので、機能してないAD2人に無理を言ってリサーチを手伝ってもらうことにしました。ADからは

AD
AD

分かりました。今日中に調べます。

と、青ざめた表情でしたが、前向きな返答がありました。

しかし、結論から言うと、
そのADは僕の頼んだ仕事を黙って全スルーしたのです。

そして翌日、他のディレクターの地方ロケについて行ってしまったのです…。

これは僕の想像ですが、そのADはあまりにもキャパオーバーすぎてどこかで責任感の糸がプツンと切れて

AD
AD

優先すべきは「自分が行くロケ」だ!

それ以外のディレクターなんて全部無視!

という判断が下ったのだと思われます。

 

そう。僕はADに切り捨てられたのです!!

 

極限状態に追い込まれたADは
ディレクターを切り捨てる。

この特番で唯一、勉強になったのがコレでした。

 

恐怖⑤ 演出の言うことを無視する

ADに切り捨てられた僕。

その僕も極限状態にあったため、

キャーーーーー!!

僕も、演出の言うこと無視しよう!

(心の叫び)

と、心に決めました。

そもそも40分の台本でも仕込みが間に合っていません。台本打ちで追加されたものを新たにリサーチして仕込むには時間がありません(ロケ明日だし)。追加分については「気にしない」方向でごまかすよう密かに動き出します。

 

恐怖⑥ 追加されたADがポンコツだった!

ロケ前日になって、ようやくADが1人追加されました!
そして、そのADは僕の下についてくれることになったのです!

『ADに切り捨てられる』という初めての経験で、心に深い傷を負っていた僕にとって、とてもありがたいことでした。

しかし、その時ちょっと不思議に思ったのが、わざわざそのADの制作会社のプロデューサーが、僕のところまで挨拶に来たのです!

そして、

プロデューサー
プロデューサー

この子も3年目になったんで、一通りのAD業務は何でもできます。ガンガン手伝わせて下さい。

でも、もし何かあったら言ってくださいね。

という意味深な言葉を残して去って行きました。

その意味はのちのち分かってくるのですが、結論から言うと、そのADはポンコツすぎていろんな番組に流れては異動を繰り返す、さすらいのADだったのです!

そして、この特番でも様々な問題を起こします!

最初の問題が起こったのは、配属されてから最初の仕事。

ロケ前日なのに全く仕込みができていなかった僕は焦っていました。

ディレクター
ディレクター

ロケする公園に申請書を出してきて!

とそのポンコツに早速お願いしたのですが、お昼に公園に行ったきりなぜかその日は局に戻ってきませんでした。

公園までは局から30分。携帯はずっと音信不通です。

夜になってやっと繋がったのですが、ポンコツ曰く

AD
AD

会社に立ち寄ってました。すみません!

とのことでした。全く意味はわかりませんでした。

そして、そのまま怒涛のロケ(4日間)に突入します。

 

恐怖⑦ ポンコツAD。ロケ先のエレベーター前で爆睡!

そのポンコツADが4日間とも僕のロケについてくれたのですが、前日の出来事ですでに「ポンコツである」ことは僕も見抜いていたので、あまり仕事をお願いすることはできませんでした。

しかしロケの段取り上、どうしても次のロケ先に誰かが前乗りして撮影の準備をしておく必要があったので、そのポンコツにお願いしました。

AD
ポンコツAD

分かりました!行ってきます!

意気揚々と次の現場に前乗りしてくれたのですが、いざ、現場に僕が到着すると、信じられないほど恐ろしい光景が目に飛び込んで来ました。

なんと、ロケ先のエレベーター前の床で、そのポンコツが大の字になって爆睡していたのです!

(※イメージ。こんな感じ↓)

意味不明!!

そのロケ先はスポーツ施設だったのですが、人が往来しまくるエレベーターの前でなぜか爆睡…。端とか角とかではなく、なぜかエレベーター前!いびきをかいてなかったら「突然死」と勘違いされるレベルです。

ポンコツ曰く、

AD
ポンコツAD

眠気に弱いんです。すみません!

とのこと。(意味不明)

もちろん撮影の準備は何もできてなかった上に、施設の人に平謝りすることになりました。

テレビ業界にはたまにこういう人が入ってくるので、エピソードに困ることはありません。

 

恐怖⑧ 結局VTRはお蔵入り。そして…

色々な恐怖体験がありましたが、怒涛の4日間ロケも終わり、プレビューもなんとか乗り切って編集に入ることになりました。

しかし、その段階になって

ディレクター
演出

やっぱり尺オーバーだな。

と、ようやく演出が気づきます。
(アホなんだと思う)

そして7本のVTRのうち2本はサブだししないことになりました。

いわゆる「お蔵入り」ですね。

お蔵入りになったうちの1本は僕のVTRです…。
あんなにしんどい思いをしたのに…。

しかし、40分という超大作なのでお世話になったロケ先は膨大な数!
そんな簡単にお蔵入りにすることはできません。

そこで演出が導き出した解決策は「他の番組でオンエアする」こと。

 

何それ!斬新すぎるんですけど!!

ということで、僕のVTRはその特番ではなく別の番組でオンエアされました。最終的な尺は15分くらいになりましたが…。恐ろしい。

 

後日談

様々な恐怖体験がありましたが、オンエアは無事に終わりました。

しかし、視聴率は散々でした。あんなにヤバすぎる制作環境ではそりゃあいいものは作れません。

そして、2人のADはその後辞めてしまいました。
ポンコツだけは今もADとして頑張っているみたいです。恐怖です。

 

以上、今だから語れる僕の恐怖体験(失敗談)でした。

しかし、この経験からヤバイ特番を回避する能力が身につきました。
同業者の皆さんのためにシェアします↓

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コメント

  1. AD研究生 より:

    ポンコツAD笑笑いつも読んで元気もらってます。

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