ADという業務の特殊性がゆえに
学生時代、どんな純粋だった子でも仕事をしているうちに、どんどん「人間性」が変わって行きます。
「悪い」方向に変わってしまう場合もあります。
僕の実体験をふまえつつ、中でも代表的なもの5つをご紹介したいと思います。
①どこでも寝られる
枕が変わると寝られないよね〜
なんてデリケートで繊細な感覚は失くなり、どこでも寝られるようになります。
人間というものは眠くなれば自然とどこでも寝られるということを学ぶことになります。
女性の場合は特に
スッピンだから恥ずかしい
前髪が乱れて恥ずかしい
寝顔を見られて恥ずかしい
など、
女性らしい「恥ずかしさ」みたいな感情はどんどん失くなっていきます。
いや、本当は恥ずかしいのかもしれませんが諦められるようになります。
寝る方法として有名なのは「イスを並べて寝る」ですが、他にも「机に突っ伏して寝る」「ソファで寝る」「床で寝る」「テープ倉庫で寝る」など様々なバリエーションがあります。
個人的には寝袋を買って床で寝るのがオススメです。
寝袋、ものすごい快適です。
②容赦なく『捨てられる』
勿体ないから捨てられない!
という感覚が失くなります。
ブツ撮りで使った商品や食べ物は、撮影後、処分しなければなりません。
足りなくならないよう多めに用意しておくのが普通で、撮影では結局使わずに新品のまま残っている場合もあります。
ブツ撮り終わったら、ちょうだいね〜
なんて言ってくる面倒なプロデューサーがいたりするので、余ったものは社内の人にお裾分けしたり自分で持って帰ったりするのですが、撮るものが30個も40個もある時は、撮影後、部屋がゴミ屋敷のような状態になります。
(※イメージ図↓)
これは新品で…これは使ったもので…
こっちはプロデューサーに残して…
なんていちいち仕分けするのは非常に面倒で時間と手間がかかります。『深夜2時に撮影が終わって朝6時からロケ』なんて極限状態の時は特に片付ける気力などありません。
ADは撮影が終わった瞬間、すぐ寝たいのです。
でも、ゴミ屋敷状態の部屋を片付けなければなりません。
そんな時、なんの躊躇もなく無感情で全てをゴミとして捨てられるようになるとADとして一人前になった証拠です。
高級食材だろうが、
地域の名産品だろうが、
おしゃれ化粧品だろうが、
便利グッズだろうが、
問答無用で全てゴミ袋に入れるのです。
最初は
勿体ない…
という心理的ハードルが高くて、できません。
しかし、時間に追われたり、徹夜が続いて精神的に極限状態に陥ると、あっさりと捨てることができるようになります。
僕は捨てられるようになるまで3年ほどかかりましたが、1年目からできる人もいます。
ただし、
取材先のお店で出してもらった料理などはゴミ袋に捨てるなんてことを(目の前で)してはいけません。
どうしても食べきれない時はタッパーに入れて持ち帰ってから捨てましょう。(いや、食べましょう。)
③ゲスい下ネタに動じなくなる
テレビ業界の人はなぜか風俗の話が大好きです。
多分、業界の伝統なんだと思います。
会議中やリサーチ中、編集中、地方ロケに行った時は現地の技術さんに
夜はどこで遊ぶんですか?
なんて聞かれたりします。
学生時代から風俗で遊びまわる人なんてほとんどいないので、新入社員の時は戸惑います。
しかし、
ずーっと話を聞かされたり連れて行ってもらったりするうちに、次第に慣れてくるのです。
④時間感覚が狂う
テレビ業界は
「夜20時から会議です」とか
「夜22時から収録です」とか
「深夜0時から編集です」とか
「深夜2時から先輩と飲みです」とか
なぜか「夜型」のスケジュールが組まれる事が多いです。
夜なんだから寝ましょうね!という感覚が欠如しています。
そのため、多くの業界人は「朝寝て昼(夕方)起きる」という睡眠サイクルになります。
ちなみに、僕の睡眠サイクルは日によって変わるのですが、朝の5時に寝て12時ごろに起きることが多いです。
最初は
明日の朝から編集に入ればいいのに…
なんて不満を感じたりもしましたが、テレビには「オンエア日」という絶対にずらせない納期があります。
たいていの番組はケツ合わせで動いているのでオンエア日が迫ってくると、ロケ、サブ編集、収録、本編編集がギュウギュウに詰め込まれるのです。
ひどい特番などでは「1週間くらい寝ない前提」の無茶なスケジュールが組まれたりします。
そうなると困るのが大学時代の友人とのスケジュール合わせ。
18時から合コンね!(友人)
なんてせっかくのお誘いが来ても、ほとんど参加できないのです。
AD時代、同期と「深夜0時から合コンしよう」と計画したことがありましたが、相手が見つからず実現には至りませんでした。
⑤喋るようになる
仕事上、他人と話す機会が多いので根暗な人でも喋れるようになります。
特にADは、取材先の人と電話で話す機会が多かったり、
先輩ディレクターに
あの子、ナンパして来い!
と、命令されたりするので、大人しくて根暗な子でも知らない人と話さざるを得ない状況になります。
僕はもともと内気で人見知りな性格で、学生時代、同世代の人間以外と喋るようなことはほとんどなかったので、特に目上の人と話すのが超苦手でした。
敬語なんて使った事もなかったし、電話で他人と喋るのも嫌でした。
しかし、強制的に話す機会が増えて訓練を積んでいるうちにスイッチをいれれば誰とでも普通に話せるようになれました。
特にディレクターになると、街頭インタビューで不特定多数の人に声をかけまくったり、タレントさんと打ち合わせする事もあるので「知らない人と話す」能力は必要不可欠だったりします。
まとめ
要は、人間は必要に迫られたら何でもするってことなんだと思います。
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