テレビAD歴7年。過酷な時代の乗り切り方とは?
テレビ業界に就職してもすぐディレクターになるわけではありません。
誰もが最初はAD(底辺)からキャリアが始まります。
会社や番組にもよりますが、ディレクターになるまで報道や情報番組で2〜3年。バラエティだと5年くらいでディレクターになります。
しかし、僕は7年間もADをやっていました。
つまり落ちこぼれです。
7年もADをやっていると普通は辞めてしまう人が多いのですが、僕は何度も死の淵をさまよいながらも不死鳥のように蘇り、ディレクターになりました。そして今でもテレビ業界で働いています。我ながら珍しいタイプだと思います。
ADって大変なんでしょ?
7年も続けられないよ!
と不安になっている就活生や現役ADさんたち。
ほとんどの人は「ちゃんとやれば」もっと早く出世します。そこまでナーバスにならなくても大丈夫。
ただし、僕のように長〜いAD時代を経験する人も中にはいるはず。
今回は7年間もAD生活を続けていくと『どんな事が辛くなるのか?』『その辛さをどうすれば乗り切れるのか?』について実体験を交えながら詳しく解説したいと思います。
地獄のAD7年間。辛いこと5つ
まずは『どんな事が辛くなるのか?』をまとめると、以下の4つです。
②仕事をサボるようになる
③ディレクターの勉強期間中もAD業務が発生する
④後輩に追い抜かれる
⑤転職するか超悩む
ひとつずつ解説します。
辛いこと① 仕事に飽きてくる
ADの仕事というのは思いのほか地味な作業が多いため、すぐに飽きてしまいます。
最初は
ロケが楽しい!収録が楽しい!
タレントさんに会えるのが楽しい!
というミーハーな気持ちで乗り切れるのですが、半年もすれば目新しさは無くなり、忙しさも合間って仕事がどんどんしんどくなってきます。
ラーメンが大好きでも毎日食べ続けるとしんどくなってくるのと同じです。
そしてAD2年目になればたいていの仕事はできるようになり、3年目になると新しく覚えるような仕事はほとんど無くなります。
つまり、ADの仕事は3年もすればほとんど全ての事ができるようになり、成長を実感する事がなくなります。
そのため4年目以降のAD作業は完全に惰性になります。
4年目になれば簡単なVTR作りなどディレクター業務もやらせてもらえるようになっているはずですが、昇格するまでは同時並行でAD作業もやらなければなりません。
7年もADを続けていると『飽きた仕事でもやり続けなければならない』という辛い期間を何年間も過ごすことになるのです。
辛いこと② 仕事をサボるようになる
当然、仕事に飽きているので仕事をサボるようになってきます。
ベテランADが陥りがちなことですが、ここで『本当にサボってしまう』と大変なことになります。なぜなら
あいつ、最近手を抜いてるな。
やっぱダメだな〜
みたいな感じで、上司からの評価が落ちてしまうからです。
ADが手を抜いてるかどうかをディレクターは一瞬で見抜くことができます。これは僕もディレクターになってから気づいた事なのですが、ADはうまくサボっているつもりでも、ディレクターは締め切りまでの時間や仕事量、仕事の難易度など様々な状況から
これぐらいの時間があれば、ココまではできるはず。
という計算をした上でADに仕事をお願いしています。
その計算より明らかに成果が満たない場合は『サボっている』と認定されます。
しかもディレクターの「計算」はハードルが高い場合が多く、3年目以上のADなのに満足できる仕事をしないと、ディレクターからの評価が下がります。
そして、ディレクターの評価は自分の昇進に直結します。
ここがベテランADの辛いところ!仕事に飽きているため何とかしてサボりたいのですが、本当にサボってしまうと自分の評価が下がり、出世がどんどん遅れていくのです(悪循環)。
たまに後輩に仕事をガン振りするベテランADがいますが、下のADに任せてもディレクターが満足いく成果は得られない場合が多いので、結局自分の責任になります。
仕事をサボりたいけど、サボるとどんどん評価が下がる!
これはベテランADが必ず経験するジレンマなのです。
辛いこと③ ディレクターの勉強期間中もAD業務が発生する
AD3年目くらいになるとディレクターの勉強期間に入ります。
簡単なロケや編集、VTR作りをやらせてもらえるようになります。
しかし、その間もAD業務はサボれません!
つまり、AD3年目になるとディレクターの仕事もやりつつ、AD業務もやらなければならない「同時並行」の期間が訪れるのです。
当然仕事量がドーーーンと増えるので、肉体的にも精神的にも辛い思いをする期間になりますが、ディレクターに昇格するためには避けられません…。
この期間が長くなると、途中で諦めて辞めてしまうADさんが続出します。
僕も何度辞めようと思ったことか…。
辛いこと④ 後輩に追い抜かれる
AD5年目をすぎると、同期の中からディレクターになる人が出てきます。
時には後輩がディレクターになることもあります。
あれ?いつの間に…(呆然)
僕も何度、追い抜かれたことか…。
後輩に追い抜かれたADはメンタルがやられます。
表向きは平静を装っていても
お、お、おう。余裕だぜ。
俺は大丈夫だからよ…。
(やべぇ!終わった、どうしよーー!)
みたいな感じで、心の中では号泣です 笑
このメンタル崩壊は、ちょっとした思考法で改善することができるのですが、後ほど説明します。
辛いこと⑤ 転職するか超悩む
全てのADは常に転職するか悩んでいるものですが、ADも5年目を超えると30歳を目前にして
今さら転職なんてできないよ!
どうしよう…
という感じで、自分の年齢とキャリアとの間で思い悩むことになります。
今から他業種に転職するのは厳しいし、かといって他の制作会社に転職しても、またイチからAD修行のやり直しかよ…
みたいな感じで、超悩みます。このブログを読んでる方がADさんだったら99%同意してくれると思います。
もしADを辞めるなら、早い方が良い。
というのはテレビ業界の鉄則です。悩む時間が長くなればなるほど次を打つ手が遅れてしまいます。続けるなら続ける、辞めるなら辞める、5年目を迎えたADさんは腹をくくる時期に入ります。
ADを辞めるタイミングの判断については、後ほど詳しく解説します。
では、ここからは『これらの辛さをどうすれば乗り切れるのか?』について解説していきます。
長いAD期間をどう乗り切るのか?
まずは、長いAD期間で辛いこと5のおさらいから。
②仕事をサボるようになる
③ディレクターの勉強期間中もAD業務が発生する
④後輩に追い抜かれる
⑤転職するか超悩む
これらの解決策についてひとつずつ解説します。
①仕事に飽きてきたら、ディレクター業務を自主的にやれ!
ADの仕事に飽きてきたら、ディレクター業務を「自分で」やってみましょう。
会社から頼まれなくても自主的にやっちゃいましょう。
これは『勉強になるから』とかいう立派な理由ではなく、AD業務の中に何かしら別の仕事を紛れ込ませることで、退屈なAD作業が単調になるのを防ぐためです。
まあ、どうせやるなら将来の役に立った方がよいので、台本を書いてみたり、編集をしてみたり、なんでもいいので単調な日々の仕事に刺激を入れましょう。
僕のオススメはYouTubeチャンネルを作ってみることです。
ただし真面目に毎日する必要はありません。仕事量が増えて通常の仕事までしんどくなっては元も子もないので、できる範囲でやりましょう。
飽きないために、ちょろっと別のこともやってみよう。
くらいの感覚でOKです。嫌なら中途半端で辞めてもOK。
ただし「ゲームをやりまくる」とか「Netflixを見まくる」とかではダメです。それはただの休憩時間。
仕事の中でいつもとは違う刺激を入れてみる、ということが重要です。
目的はあくまで「飽きたけど仕事を続けていくための工夫をすること」だというのを忘れないで下さい。
②仕事はサボってOK!最低限の仕事だけやろう!
飽きた仕事には身が入らないので、適度に仕事をサボっちゃいましょう!
ただし、先ほど書いたようにディレクターは『サボっているADを一瞬で見抜くことができる』ので、最低限ディレクターの要望に応えられるくらいの働きはするようにしましょう。
特にADの仕事の根幹である「ネタのリサーチ、仕込み(アポ取り)、情報確認」。この3つだけは絶対にサボってはいけません!しかし、丸投げさえしなければ後輩ADにやらせちゃうのも有りです。
3年目以上になれば、ある程度サボりながらでもしっかり仕事を仕切れるようになっているはず。しょーもない雑務などは後輩ADに任せましょう。
③ディレクター業務は、先輩ディレクターに思いっきり頼ろう!
ディレクター業務&AD業務の「同時並行」期間は、肉体的にも精神的のも辛い時期です。できるだけ短い期間で乗り切る事が重要。(僕は5年位やったけど…)
そのためには、とにかく先輩ディレクターに頼ることです。
台本をチェックしてもらうのは当たり前、「撮り方」の相談をしたり、プレビュー前に編集も見てもらいましょう。(プレビュー前にテロップを入れとくのも忘れないように!格段にオフラインの印象が変わります。)
常識的な制作会社なら、最初は先輩ディレクターが面倒見役としてついてくれるはずです。その人に思いっきり相談しましょう。その人が嫌いなディレクターなら、迷わず別のディレクターに相談しましょう。
ADが作ってくるVTRには、そこまで高いレベルは要求されていません。
とりあえず、成立はしてるかな。
と思ってもらう事が重要であり、爆笑VTRを作る必要はありません。
ただし、成立さえできていないと、次のチャンスをもらえなくなってしまいます。
まずは「成立させる」こと。
先輩ディレクターのアドバイスをよく聞いて、最低限成立させるように頑張りましょう。最初は過去のVTRを真似するくらいでもOKです。
④後輩と「今」競争せず、10年後に競争しよう!
たくさんの後輩に追い抜かれてきた僕が編み出した、後輩に追い抜かれても気にならないための思考法はコレ↓
「ディレクターになる早さを競っているわけではない。今、後輩と競争しても意味がない。10年後には俺が勝っている!」
これを強く意識して下さいw
メンタルが落ちてきたら、この文言を何回も唱えて自分に暗示をかけましょう。
本当の勝負は『ディレクターになってから何をするのか?』
今追い抜かれたことを気にしてもあまり意味はありません。
10年後、ディレクターとして何をやっているのか?が問題であり、今の状況を悲観することは全くありません。僕も今や追い抜かれた後輩たちに負けないくらいの活躍ができている、という自負があります。
「今」勝負するのではなく、
10年後に勝ってればいいや。
くらいの気持ちでやっていきましょう。
⑤転職するか悩んだ時。辞める基準は「ディレクターになりたいかどうか」
30歳を目前にしたベテランADにとって転職の決断は簡単なことではありません。
今から他業種に転職するのは厳しいし、かといって他の制作会社に転職しても、またイチからAD修行のやり直しかよ…
そんな悩みを持ったADさんたちに僕が思う「辞める時の判断基準」をお伝えします。それは「本気でディレクターになりたいかどうか?」です。
「本気で」というのがミソです。本気じゃない人は今すぐ辞めた方が良い。
なぜなら、ADを続けていく意味ってコレだけしか無いからです。
本気でディレクターになりたい場合
本気でディレクターになりたい場合の選択肢は2つ。
②辞めて、別の会社でディレクターを目指す
今の会社で
あんまりうまくいってないな…。
評価されてないな…。
担当番組がつまらないな…。
上司が嫌いだな…。
と思うADさんは転職することをオススメします。
環境を変えると、自分の状況も変化します。
ご存知の通りADはどこも慢性的な人手不足なので、経験のあるADさんはとても貴重な人材。ベテランADでも30歳くらいまでなら制作会社の転職は比較的簡単です。なので、思い切って転職しちゃうのもひとつの手。
ただし、今の会社に残ったら『もう少しで昇格できる』とか『勉強になる先輩ディレクターがいる』という状況ならば残っても良いかなと思います。
本気でディレクターになりたくない場合
さっさと転職しましょう!時間の無駄です!いや、マジで!
まとめ「10年経ってもダメなら無条件で辞めよう」
これはあくまで僕個人の統計なのですが、10年以上ADをやっている人の中でディレクターに昇格できた人を見たことがありません。
ディレクターになるには実力以外にも運や会社の環境が大切だったりするのですが、10年経っても昇格できない場合は自分自身に問題がある可能性が高いです。
もしかしたらテレビに向いていないのかもしれません。
向いていないことは潔く諦める!というのは生きていく上で大切な判断だと思います。だって、向いてる仕事が他にあるかもしれませんからね。
歴10年以上でディレクターになった人ももしかしたらいるかもしれませんが、かなりのレアケースである事は間違い有りません。少なくとも僕が知りうる限りでは、10年選手のADはみな才能がありません。APさんに進路変更するのも有りです。
「10年」というのがひとつの基準だと僕は思います。
ディレクターを目指している方はぜひ参考にしてみて下さい。
僕のYouTubeチャンネルでもテレビの話をたくさんしています!
ぜひ、こちらもお楽しみ下さい↓
コメント