ある日突然ADが音信不通になり、仕事場に来なくなること。
ADの辞め方ランキングの第1位であり、残念ながらどの会社でも年に数回は必ず起こる出来事です。
今回は「ADが飛んだらどうなるのか?」を、その当日のスタッフの対応や心情、事後処理などと合わせて解説します。
なぜ、飛ぶのか?その原因は?
そもそも、ADが飛ぶ原因とは何なのか?
過去、飛んだことのあるAD4人に聞いてみた所、全員が
・仕事量が多すぎてキャパオーバー
という理由を挙げました。
企画が急に変わったり、リサーチや仕込みが多すぎて一人では対応できなかったり、明らかに一人では抱えきれないような仕事量を無茶振りされた時に飛んでしまうようです。
人件費を削りまくってるテレビ業界では、どの番組も「必要最低限の人数」よりも1〜3人足りない状態で制作しています。
特番やスペシャル番組などはその傾向が顕著です。
(特番は、通常回の仕事を抱えながらやらなければならない)
意外にも「ディレクターやプロデューサーにパワハラされるから」「給料が薄給過ぎるから」といった理由では無いようです。
ADが飛ぶタイミングは「ロケ当日」か「編集中」
ADが飛ぶときは、体力的にも精神的にも最も追い込まれている時です。
必然的に「ロケ当日」や「編集中」など、めちゃくちゃ忙しくて、周りのみんなも疲弊しているタイミングで起こります。
実録!ADが飛んだ日。その対応
「ADが飛んだ日」その番組はどうなってしまうのか?
僕の番組で起こった実際の例で解説します。
ロケ当日に飛んだ場合
そのロケは「ディレクター1人、AD1人」体制のロケだったのですが、朝、ディレクターが会社に出社してもADがいません。
ADが飛んだ時、その異変に最初に気づくのは直属のディレクターです。
対応①「鬼電する」
当然、最初は電話します。1度では出ないので何度も何度も電話します。スピーカーフォンにして電話に出るまでずっと鳴らしっぱなしにしておく場合もあります。
この時点ではまだ、単純に寝坊だと思っています。
対応②「プロデューサーに鬼電する」
鬼電してもADがつかまらない、という状況で勘のいいディレクターは「飛んだかも?」と思い始めます。
早急にプロデューサーに連絡します。
ただ、ロケは朝早い場合が多いので、プロデューサーにも連絡がつながらないことが多く、鬼電します。
対応③「とりあえずロケはやる」
ADがいなくてもロケは始まります。
ディレクターは1人でロケをしなければなりません。
ロケ内容にもよりますが、実は普通に支障なく終わります。
(もちろん現場で苦労はしますが…)
最近はAD無しでディレクターが1人でロケに行く番組も多いので、ロケを一人で回すことに慣れてるディレクターも多いです。
もともと、ADが複数ついているロケの場合は、
残ったADたちで何とかしてもらいます。
対応②の時点でプロデューサーがつかまった場合は、
代理のADを派遣してもらえる場合もあります。
対応④今後の対策を考える
無事にロケを終えると、その日の夜にディレクターとプロデューサーが今後の対応を考えます。
たいていの場合は同じ番組内のADがカバーすることになるのですが、どうにもならない時は別番組のADさんを代理で立てます。
若手ディレクターの場合は「ADいないからお前一人で頑張って!」という無茶振りがくる場合もあります。(不運としか言いようがない…)
編集中に飛んだ場合
編集中に飛んだ場合も、ロケ時の対応と手順は変わりません。
ただし、ロケとは違って編集は「最初はADだけで回して、後からディレクターがくる」というパターンが多いので、
ADが飛んでも、発覚までに時間がかかる場合があります。
僕の番組でこの前発生した事例では「編集に誰も来ないんですけど、どうしたんですか?」と、編集所から会社に連絡が来て初めて発覚しました。
朝10時からの編集なのに、発覚したのは13時ごろ。
その時はオンエアギリギリのスケジュールで動いていたので、スタートが出遅れたのはかなり痛い…。編集に使う資料映像や写真、イラストなども何も揃っていなかったので、急遽代理のADと打ち合わせをして、できる所から編集が始まりました。
さらに、追撮の仕込みも全く手をつけられていなかった(飛んだADが仕込み済みのはずだった)ので、とにかく大変そうでした。僕の担当じゃなくてよかったー。
事後処理
飛んだADは絶対に電話に出ないしLINEも未読スルーです。
正直、生きているのかどうかも分かりません。
そのため、プロデューサーがADの自宅を訪ねて、今後どうするのかを冷静に話し合います。
自宅に行っても居留守されちゃう場合は、親御さんに連絡をして説得してもらいます。
飛んだADのことは、ほっといたらいいのでは?
と思うかもしれませんが、
ADは数十万円もする高額の「仮払い(会社のお金)」を持っているので、それを清算させるまでは、どこまでも行方を追い続けなければならないのです。
飛んだADの9割はそのまま辞めてしまいますが、復帰するADもいます。
辞める場合は、仮払いの清算だけはきっちり済ませます。
復帰する場合は、ある日しれっと会社に現れて、何事もなかったかのように仕事を始めます。
ある意味たくましい。
飛ばないための予防策
人を増やして給料も上げる!
これしかありません。
特に、特番の時は単発でもいいので人を雇った方が良いです。
そして、人を増やすだけでは不十分で、長期的に働いてくれる優秀な人材を確保するには給料も上げないとダメです。
人件費を上げられない制作会社は、今後潰れていくと思われます。
人がいない時は仕事を受けない
基本、制作会社は依頼が来たら断りません。(断れません)
どんなに人が足りなくても、馴染みの局Pから振られた仕事は請け負ってしまいます。
そんな体制も改めないとダメ。
でも、仕事を堂々と断れる制作会社って見たことないんだよなぁ。
ぶっちゃけ飛んでも大丈夫
飛んだADが他の会社に転職することはよくあります。
飛んだとしても、他の会社でやり直しがきくので、「本当に逃げないと自分がヤバい」時は逃げるのも有りかもしれません。
その会社でもまた飛んでしまうこともあるようですが…。
まあ、なんとかなるもんです。
関連記事:【実話】ディレクターが飛んだらどうなるのか?↓
僕のYouTubeチャンネル『ぼやきDのテレビの話』でもADに関するたくさんの話をしています。ぜひこちらもご覧ください!↓
コメント
飛ぶのは仕方ない…。どんまい。