日テレの『頭脳王』賛否両論あるらしい
僕の先日のツイートに対してたくさんの意見を頂いたので、同業者からの私見ですが、せっかくなのでいくつかの疑問にお答えしたいと思います。
(先日のツイートはこれです↓)
この記事を読むと『頭脳王の面白さの秘密』『テレビ番組の作り方』などが分かってくると思うので、最後まで読んでもらえたらうれしいです!
『頭脳王』の面白さは「視聴者を無視すること」
整数の解 x,y,z それぞれの値を求めなさい。
いきなりこんな問題出されて分かるわけないっすよ…
でも、出演者たちは4人中3人も正解しています。
(どういう人たちなの…?)
解答と正解者だけは発表されましたが、答えを導くための解説などは一切なく、すぐ次の問題に移ってしまいました。完全に視聴者はおいてけぼりです…。
このありえない状況に
クイズ番組なのに答えの解説ないのかよ?
視聴者無視かよ!クソ番組が!
という趣旨の意見が散見されました。
正直、この意見は正しいと思います。
僕も衝撃を受けましたから。
普通のクイズ番組では視聴者にも分かるように「解説の時間」が設けられています。しかも『中学生でも分かるように説明するのがテレビのスタンス』なので、かなり噛み砕いて説明します。
というか、噛み砕いて説明できないような問題は出題しません。
でも『頭脳王』は、そういったセオリーを完全無視!
解説の時間はほとんどなく「出題と解答発表」がテンポよくひたすら繰り返されていきます。
でも『頭脳王』はこれで良いのです。
なぜなら『頭脳王』が見せたいのは「問題の答え」ではありません。「ひたすら難問を解いていく天才たちの戦い」を視聴者に見せたいのです。
視聴者にも一緒にクイズで楽しんでもらおう!
なんて気持ちは毛頭ありません(たぶん)。
一見、視聴者を無視しているような作り方ですが『天才たちが問題に立ち向かっていく様子をたくさん見せる』ためには「答えの解説」に時間を割くのは時間の無駄。天才たちの戦いを最大限ショーアップするために視聴者の理解を切り捨てる!という判断を下しているのです(たぶん)。
これって他のクイズ番組では考えられません。
クイズ番組は普通、ファミリーで見られることを想定します。
出題→たっぷりシンキングタイム→解答発表→珍解答いじる→丁寧な解説→次の問題へ
というのが一般的な流れ。純粋にクイズを楽しむために、シンキングタイムはたっぷり、正解できないタレントさんたちを笑ったり珍解答をいじったり、丁寧な解説にも時間を割きます。
でも『頭脳王』に関しては
出題→短いシンキングタイム→解答発表(解説なし)→次の問題へ
という流れでした。圧倒的なテンポの良さ。
「視聴者に問題の答えを理解させる必要はない!」
「どうせ解説しても分からないしね」
「というか問題の意味も分からないっしょ?」
「どうしても知りたければ自分で調べて!」
というスタンスでやっています。『頭脳王』の特徴はまさにそこ。
視聴者の皆さん、クイズを解くのは諦めて下さい!それより天才たちを見て下さい!この人たちの異常な知識量を楽しんで下さい!
という番組の意志がはっきりと伝わってくる構成でした。
俺は純粋にクイズを楽しみたいんだよ!
という方にとっては、つまらないと感じたはずなので批判が出るのも仕方ありません。でも、そういった「クイズを解きたい視聴者たち」をあえて無視して「天才たちの頂上決戦にフォーカスする」ことで、他のクイズ番組と差別化しているのです。
『頭脳王』の難問は解説しても意味がない
特に衝撃を受けたのはこの問題。
10年後に地球の気温は何度になる?
この問題を解くための条件がこんなにたくさん提示されたのですが↓この画面がオンエアで表示されたのはたったの数秒間!
いや、絶対読みきれないんですけど!
サブリミナルかと思ったんですけど!
それもそのはず。番組側は読んでもらうつもりなどありません。
「どうせしっかり読んだって分からないでしょ??」
「ただ天才を見てればいいんです、視聴者は。」
という番組側の意図がはっきりと感じられました。
いやはや、すごい番組だ。
僕が「清々しい番組だ」と思った理由はここ。
ここまで振り切るには番組側にも覚悟が必要です。絶対視聴者からクレーム来ますからね。(実際SNS上では批判がありました)
というか静止画でじっくり見ても、読み切るのに30秒くらいかかったんだが。読んでも意味が分からんのだが。なんだこの条件。知らんがな。
多分、そんな視聴者は僕以外にもたくさんいるはず。
答えは「-123.3℃」だったそうですが、2人とも正解していました。でも、この答えの導き方を丁寧に解説された所で、ほとんどの視聴者はついていけないと思います。
ここで『頭脳王』が視聴者に伝えたかったのは「この問題を解くには条件がたくさんあります!」ということだけ。数秒間パッと見せれば十分その恐ろしさは伝わります。
むしろ見せる時間を短くすることで
いや、難しすぎるんだけど!
意味わからないんだけど!
という強烈なインパクトを与えることができます。
そして、そんな難問を天才たちが正解して見せたら、どう思うでしょうか?
きっと天才たちの圧倒的な知識量に魅了されて一気に番組に引き込まれると思います。
実は、あのサブリミナルみたいな「条件のチラ見せ編集」が、出演者の天才ぶりをより一層引き立たせているのです。
うまいやり方だなぁ。
解説を無くしてテンポよく見せる
この番組は答えの解説がない分、他のクイズ番組に比べて出題数も多かったように思います。問題と解答をあえてテンポよく見せることで、
なんだこいつら。
めちゃめちゃ答えるやん!
という印象を与える狙いもあったんじゃないでしょうか。
スタジオのタレントたちが「正しい見方」
スタジオにいたタレントたちが「すごーい!」「なんでこんな問題が解けるの?」とか驚いていました。
あのタレントたち必要なくね?
なんで呼んだの?
なんて意見もあったようですが、実はちゃんと理由があります。
あれは、
視聴者の皆さん。
これがこの番組の正しい楽しみ方です。
こういった感じで番組を見て下さいね!
という、番組側から視聴者へのメッセージなのです。
タレントたちのリアクションがいわば「お手本」であり、視聴者にもああやって驚いて欲しい!と番組側は思っているのです。それをタレントさんたちを使って伝えているわけですね。これも「視聴者に分かりやすく」の一種だと思って下さい。
「暗記する」のも頭脳のうち!
先ほどの問題。
実は、たくさんのコンピュータを使って最近解かれたばかりの問題で、計算してすぐに答えを出すのはほぼ不可能なようです。
でも、4人中3人が正解しました。一体なぜなのか?
みなさんのリプによると「答えを暗記していた」んだそうです。
本人たちに聞いたわけではないので真偽のほどは分かりませんが、確かに暗記でもしてなきゃ絶対解けなさそうな問題です。
計算問題に見せかけて暗記問題じゃねえか!
出題の仕方が作為的だ!
という趣旨の意見が散見されましたが、
正直言ってこの意見は的外れだと思います。
仮にこの番組が『計算王』だったら、しっかり計算して導き出すべきなのかもしれませんが、『頭脳王』は知力の総合格闘技です。
暗記だろうが計算だろうが「知識」として覚えていればOKなのです。
これがダメなら、九九のテストをする小学生に「暗記した九九を使うな!計算して答えろ!」とイチャモンつけてるようなもんです。
暗記問題なんだから「値を求めなさい」じゃなくて「書きなさい」「空欄を埋めなさい」と出題するべきだ!
という意見もどうかと思います。
もしかしたら出演者の中に、本当に計算して解いてしまう天才もいるかもしれませんよ?
予選会に出た問題を「覚えるのがすごい」
またまたこの問題に関する意見。
実はこの問題、
予選会にも同じ問題が出ていたから答えられたのでは?
過大評価すべきでない!
という意見があったようです。
本当に予選会と同じ問題だったのか?この情報の真偽に関しては不明です。ですが、本当だったものとして考えてみます。
確かにちょっとガッカリする気持ちは分かるのですが、問題の質が違いますからね…。上の問題の答えは17桁の数字になるそうです。
x = -80538738812075974
y = 80435758145817515
z = 12602123297335631
予選会に出て来たのと同じ問題なら当然答えられるじゃないか!と思う人もいるようですが、それでも暗記してるのすごくない!?
この問題を後日出題されて、完璧に答えられる人って世の中に何人いるんでしょうか?多分「出題しますよ!」と予告されたとしても答えられないと思います。少なくとも僕は無理ですね。
予選会に出た問題をしっかり復習して自分の知識にした人はポイントを取れるし、復習してない人はポイントが取れない。「予選会に出た問題を完璧に復習する」というのも実力のうちではないでしょうか?
こういうのを本選に向けてしっかり覚えちゃうくらいのクレイジーな人じゃないと勝ち抜けない大会なんじゃないですかね。
コメント
あまりにもカットし過ぎると本当か?と、強い演出度合いを疑い、
その天才たちの戦いの信用性が揺らいでしまうよ。
ここらへんを割り切って観れないとモヤモヤは残る番組だと思う。
x^6 + y^9 +
z^4 = 14094265117845010951510977902090296823561723879420287779733256\
6699042323364869667469873954079068390531938549823992320232607122470835\
990807998520160038049
なる整数解をも 瞬時にモトメテ!