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映画『万引き家族』心優しい犯罪家族を描く演出力【解説レビュー】

映画のこと

オススメ度5 ⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️ 
徹底的に哀しい演出に引き込まれた

 

あらすじ

2018年公開。監督:是枝裕和
主演:リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林、松岡茉優など

東京下町のボロい一軒家に住む貧乏な家族「柴田家」の物語。

家族は5人。

治(リリー・フランキー)
信代(安藤サクラ)
初枝(樹木希林)
亜紀(松岡茉優)
祥太(城桧吏)

収入は初枝の年金、そして、治の日雇い賃金、
信代のクリーニング店でのバイト代くらいしかないほど貧乏な暮らしぶり。

足りない分は治が小学生の祥太を引き連れ「万引き」する事でなんとか食いつないでいた。

ある冬の寒い日。

夫婦喧嘩が絶えないDV家庭の家前に、一人、小さな女の子が投げ出されていた。

不憫に思った治は家に連れて帰り「りん」と名付けて一緒に暮らすことになる。

家族は6人となり、さらに家計は苦しくなったが、家族全員、幸せそうに笑いながら暮らしていた。

しかし、

初枝が死んでしまったことがきっかけで、家族の運命が大きく変わり始める…。

 

感想

カンヌ国際映画祭、パルムドール受賞作品。
それだけの価値があるすごい映画。

心は優しいが、貧乏であるがゆえに犯罪(万引き)を繰り返してしまう哀しい家族の物語。

「こんな万引きしまくってたら、いつかは捕まるだろう」

と思いながら見ていたら、

やっぱり捕まってしまう!

捕まった後は家族が崩壊していくのだが、
警察に捕まってからとんとん拍子にあまりにあっさりと崩壊していくのでそれが余計にもの哀しい。

偶然かもしれないけど、せっかく家族全員で行った海水浴の日がどんより曇りだったのも、もの哀しい。

隅田川の花火大会を見てるのにワンカットも花火が映らず、
音だけで聞かせる演出も、もの哀しい。

初枝(樹木希林)が死んだ様子をワンカットも映さない演出も、もの哀しい。

道路から飛び降りた祥太の末路をみかんが転がる様子で表現するのも、もの哀しい。

「見せない」演出が好きなんですかね?是枝監督は。

あと、

「その代わりしゃべったら殺す」とか「拾ったの!」とか

安藤サクラさんのワンショットの見応えがすごい映画です。

 

樹木希林さん最期の作品

公開前に亡くなってしまった希林さん。

演技をしてるのか素なのか、自然すぎてよくわからないその演技は一見の価値あり。

 

是枝監督の演出力もすごい

一番の名シーンとも言える
信代(安藤サクラ)が尋問中に涙を流すシーン。

安藤さんは、本番カメラが回るその瞬間まで、
「なにを聞かれるのかまったく知らなかった」みたいです。

尋問役の池脇千鶴さんにも『次はこれを聞いてください』と、
毎回、是枝監督がホワイトボードに書いた台詞を見せ、
順番にセリフを言ってもらい、

安藤さんは、どんな質問が飛んでくるのかわからないような状態で「本当に尋問されているような空気感」を作り上げたそう。

そこで「子供2人はあなたの事なんて呼んでました?」なんて、残酷な質問を浴びせかけるのですが、

それに瞬時に応えられないのは

「演技なのか?」
「リアルにセリフが思い浮かばないだけなのか?」

真実は分かりませんが、

とにかく、

安藤さんが、無言で放つ存在感がこの映画一番の名シーンです。

こういう、監督の演出の裏話とか個人的には大好きです。

 

生活保護を受け取れば良かった

初枝さんの死で年金も無くなり、治も足を怪我して働けない状態。

怪我の診断書をもらって生活保護の受給をしていれば、それなりの収入を得られたのに

初枝の年金よりもずっと多くの額をもらえたはず。

ただし、戸籍を調べられると血縁関係が無い家族だとバレてしまう可能性が高く、結局、みんな離れ離れになってしまうかもしれないけど…。

警察につかまって強制的に離されるよりは
よっぽど良い結果が待っていたと思う。

 

「独り」で生きていけない人ばっかり

みんな独りで生きていくには頼りなく、
家族の温もりを求めている人ばかり。

もう少しお金があれば、きっと全員が幸せに暮らせたに違いない。

やっぱりお金って重要なんだなぁ。

というか、

家族は崩壊しても結局はみんな再生に向かっているのだが、最終的にりんちゃんだけは暗い未来しか見えない。

一番悲惨なのがりんちゃん
というのが非常に後味が悪かった

 

見てない方はアマゾンプライムで見放題なのでぜひ↓

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